メンバーと一緒にプロジェクトを進めよう
PMBOKの5つのプロセスに沿って以下のような流れでプロジェクトマネジメントについて解説していきたいと思います。今回は監視・管理についてです。
プロジェクトで実際の開発が始まると多くの課題が問題として顕在化します。特にコミュニケーション不全に起因する問題はかなり高い確率で発生します。そういったプロジェクトを遅滞させるような問題に対してどのようにマネジメントしていくのかについて考察して行ましょう。
サンプルプロジェクトに対して、PMBOKの5つのプロセスに沿った形で解説していきます。今回は(6)監視・管理です。
プロジェクト憲章の作成
プロジェクト憲章にどのような情報を盛り込むかですが、サンプルプロジェクトの規模であれば「背景・目的・ゴール」の3つが記載されていれば十分だと思います。
まずは背景です。目的が生まれる背景には何かしらの課題・問題が存在しています。なぜこのプロジェクトを実施することになったのかを明らかにし明文化します。
次は目的です。目的を明文化することでプロジェクトに集まった一人一人が目的を見失わないようにします。私の経験上の話にはなりますが、3ヶ月未満のプロジェクトだと目的を見失うといったケースはそう多くはありません。ですが3ヶ月を超えるプロジェクトはしばしば目的を見失い、メンバーのモチベーションが失われ、プロジェクトが崩れてしまうといったケースがあるように感じます。目的を明文化し、プロジェクトメンバーと折を見て何度も共有することは案外大事な作業だったりします。
最後が計測可能なゴールです。ゴールは「定量的に計測可能であること・プロジェクトがコントロール可能なものであること」が重要です。誰から見ても明確にゴールと評価可能な状態にするために計測可能であることが重要です。またプロジェクトが影響を及ぼせない、コントロールできないゴールを設定してしまうとなんのためのプロジェクトかわからなかくなってしまうからです。
これを踏まえてサンプルプロジェクトのプロジェクト憲章をこんな感じにまとめてみました。
プロジェクト憲章を作成したら、今までに作ってきた以下のドキュメントをプロジェクトメンバー全員が閲覧可能な状態にしましょう。
- プロジェクト憲章
- ステークホルダー一覧
- 体制図(資源マネジメントの計画)
- コミュニケーション・マネジメントの計画
- 要求事項
- 調達マネジメントの計画
- リスク・マネジメントの計画
- リスク一覧
- スコープ定義
- WBSとWBSガントチャート
- コストマネジメントの計画
- コストの見積り
- 予算
キックオフ
関係者全員を集めてキックオフMTGを開きます。ここでは今まで作った資料をもとにこのプロジェクトの背景・目的・ゴールの認識やスケジュール感を合わせたりすることを目的とします。
プロジェクトマネージャーとしてはここに辿り着くまでかなりのタスクを消化しているので、今更キックオフという気持ちになれないかもしれません。ですがプロジェクトに関わるメンバーの全てが一同に会した場で「プロジェクトをはじめます!」と宣言することは意外と重要です。
監視・管理をすすめるためのイベント
実行・管理フェーズでは実際のプロジェクト進行をマネジメントしていきます。具体的にはこのようなイベントを行うケースが多いです。私は過去色々なパターンを試しましたが、今一番しっくりきている進め方はこんな感じです。
- デイリースタンドアップ
- 課題管理
- 進捗確認
- スケジュール管理
これらを確認しつつ、プロジェクト運営に必要なスキルについても触れていきます。
デイリースタンドアップ
デイリースタンドアップとはアジャイルの開発手法の一つであるスクラムでよく用いられる方法で、チームの情報共有の場としての機能を持っています。具体的には以下の様なものとされます。
- 毎朝決まった時間に開催される
- スタンドアップの名前の通り、立ったまま話すことができる程度の時間(10分程度が目安)
- 可能な限りメンバー全員が参加する
- ファシリテーターが進行する
- どのような情報共有を行うかはチームが決める
どの様な情報を共有するかですが、私の場合は「昨日何をやったか、今日何をやるか、困っていること、心配なこと、あれってどうなった?」といった事項を共有します。即答できるものはその場で解決し、そうでないものについては別途MTGなどを設定してそこで解決を図ります。
デイリースタンドアップを通して全員の話を聞くことによって、プロジェクト全体のチーム状況や進捗状態を大まかに把握することができます。加えてある程度慣れてくるとチーム全員が共通の認識が持てるようになると思います。
以前色々な形を試したことがありますが、いくつかBADケースにハマったこともあるので、それらも簡単に紹介しておきます。
- 30分以上行われている
- 長くなりそうな場合は別途MTGを設定する
- デイリースタンドアップが進捗報告会になっている
- 進捗報告は別途専用のMTGを設定する
- 指示命令を行う場になっている
- 短い時間で漏れなく、明確に指示を出すことは非常に困難なため、どうしても指示命令が必要な場合は別途MTGを設定する
- 課題解決の議論が始まる
- こういった場合もやはり別途MTGを設定する
今回は簡単に紹介しましたが、デイリースタンドアップは深掘りしていくとかなり奥深いものです。機会があったら記事にしたいと思います。
課題管理
プロジェクトを進めていくと当初は見えなかった課題がどんどん見えてくることになります。こういった課題を課題管理表などにまとめて進捗管理します。課題管理表のテンプレと記載サンプルを置いておくので参考にしてみてください。
課題はプロジェクトメンバー全員が記載し、プロジェクトマネージャーが日次で管理します。私は記載された課題を解決できるのは誰なのか?どのくらい重要な課題なのか?他には影響がないか?など多角的に確認するようにしています。
進捗確認
私がよくやる方法は、進捗確認MTGを毎週1時間設定し、メンバーを集めて同期的に行います。予定していたスケジュールと実際の進捗がどの程度乖離しているのかをメンバーからヒアリングし、WBSガントチャートに記載していきます。その際に課題管理表の対応状況も合わせてヒアリングします。
以前進捗確認MTGで進捗状況だけをヒアリングしていると、メンバーから「なんか責められてるみたいでツラいです...」という意見があったので、進捗状況だけではなく何か手伝えること、手伝って欲しいことはあるか?合わせてヒアリングして解決をサポートするように改善したことがあります。
スケジュール管理
進捗確認と合わせてスケジュール管理を行うことが多いです。以前はExcelやgoogle spreadsheetを使って管理したりしていましたが、JIRAやAsanaなどのチケット管理ツールを活用してもいいかもしれません。
管理に関しては初めてのプロジェクトマネージメント(4)計画|スケジュールで作ったWBSガントチャートを使って行います。サンプルプロジェクトくらの規模であれば毎日30分程度の進捗確認MTGで事足りるかと思います。
プロジェクトのスケジュールは当初想定した通りに進捗することはまれです。想定外の仕様変更や欠勤などによる作業の遅れ、後工程で発見される前工程のミスなど様々な要因で遅延が発生します。遅延含めどのようにしてスケジュールを管理すればいいのでしょうか?
スケジュールにはクリティカルパスと呼ばれる厳密に前後関係が決まっているタスクがあります。具体的にはAが終わらないとBが始められないというものです。まずはこれを発見し、クリティカルパスに含まれているタスクとそうでないタスクをチェックしておきます。全体のスケジュールで遅延が発生しそうな場合はクリティカルパスに含まれているタスクを優先して対応することにより、遅延が致命的にならないように調整します。
それでもどうにもならない場合もあります。そういった場合、私個人はQCDSのSでコントロールするようにしています。Sでのコントロールには賛否あるとは思いますが、他のものよりは影響が小さいケースが多いので、どうしようもない場合はSで調整するケースがあります。
QCDS | 説明 | 詳細 |
---|---|---|
Q | quality(品質) | Qをコントロールするということは品質を落として対応することです。 |
C | cost(費用) | Cをコントロールするということは費用(多くの場合は人員)を増やして対応することです。 |
D | delivery(納期) | Dをコントロールするということはリリース日程を後ろ倒しにして対応することです。 |
S | scope(範囲) | Sをコントロールするということは想定する機能の中で優先度が低いものを諦めることです。 |
プロジェクト運営に必要なスキル
ファシリテーション
ファシリテーションとは、MTGや会議を「協働促進」や「共創支援」に導くために進行役が用いるスキルです。ファシリテーションを行う人をファシリテーターと呼び、MTGなどの場における黒子的リーダーです。ファシリテーターがプロセスの舵取りを担うことにより、MTGへのメンバーの参加意識が促進され、合意形成を促します。
ファシリテーターがいると会議の生産性が大きくなると言われるくらいに重要な役割です。ファシリテーターは会議の中で中立的な立場を取り、チームの意思決定プロセスをマネジメントしつつ、チームワークを醸成し、チームの成果を最大化する役割を担っています。
ファシリテーターについて掘り下げて書くには記事一本分くらいの分量が必要になるので、ファシリテーション力でミーティングや会議を改善しよう!で詳しく紹介しています。是非ご一読ください。
最後に
いかがだったでしょうか。監視・管理フェーズが終われば、プロジェクトの主な成果物であるシステムはリリースされ、打ち上げなどで気持ちも一区切りついているのではないでしょうか。次は最後の締めの終結プロセスについて見ていきたいと思います。もう少しご一緒いただければ幸いです。
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