ファシリテーションって何?
ファシリテーションとは、MTGや会議を「協働促進」や「共創支援」に導くために進行役が用いるスキルです。ファシリテーションを行う人をファシリテーターと呼び、MTGや会議におけるリーダーシップを発揮します。
ファシリテーターはMTGや会議の中で中立的な立場を取り、チームの意思決定プロセスをマネジメントしつつ、メンバーの参加意識やチームワークの醸成を促進し、合意形成を促すことによりチームの成果を最大化します。
ファシリテーションが効いている状態と効いていない状態を比較した場合、最も差がでるのはMTGや会議の生産性と言えると思います。
生産性が低いMTGや会議ってどんなもの?
では、生産性が低いMTGや会議とはどのようなものでしょうか。いくつか例をあげてみます。
- 立場が強い人が一方的に意見を述べ続け、参加者はただ聞いている
- 立場が強い人が一方的に指示・命令を出し続けたり、参加者を叱咤している
- MTGの目的や課題が曖昧なため、意見のぶつかり合いに終始し、結論に至らない
- MTGの目的が誰かを批判するためのものになり、メンタルに悪影響が出る
- 責任のなすりつけ合いMTGになっている
- 何のためのMTGなのかがわからない
- 時間内に終わらない
- 議事録がない
- 話がどんどん詳細部分にフォーカスされていき、目的からどんどん外れていく
- 次どんなアクションが必要なのかがわからない
- MTGで確認すべき事項をカバーできないまま終了し、後でフォローする必要がある
- 定例MTGなどでマンネリ化し、参加意識が薄れている
そもそも論になりますが、MTGや会議の目的は何らかの議題に対して解決策を定めたり、意思決定したり、合意したりすることにあります。例にあげたケースでは解決策を見出すことも、意思決定することも、合意することもできていません。
ファシリテーション入門
ファシリテーションのスキルを用いて生産性の高いMTGや会議をどう実現すために、ファシリテーターはどのような姿勢で臨み、どのように準備し、どのように進行するべきなのかについて考えていこうと思います。また、基礎から発展させた応用テクニックについても触れていきます。
先ほどあげた例をもう少し深掘りした表を用意しました。
表からファシリテーターがやるべきだったことを抜き出して整理してみると以下のようになります。これをベースに基礎と応用に分けて説明していきたいと思います。
- 基礎編
- どのような姿勢で臨むべきか
- 事前準備
- グランドルールの不足
- ゴール設定が曖昧
- アジェンダ設定が不十分
- 参加者の選定が不十分
- 議事録担当をアサインしていない
- 進行
- 議論をリードできていない
- タイムキープできていない
- アクションの設定がない
- 応用編
- MTGや会議の種類を見極め、適した進行を行う
- 議論をリードするための5つのトークスキル
- アイスブレイクで場を和ませ、活発な議論ができる場を整えよう
- 変化をつけて活性化しよう
基礎編
どのような姿勢で臨むべきか
ファシリテーターはMTGや会議の場に対してどのような姿勢で臨むのが望ましいのでしょうか?重要なのは誠実に向き合う、リスペクトを忘れない、信頼関係を大切にする、心理的安全性を確保するの4点です。
- ファシリテーターはMTGや会議のルール・目的に対して誠実に向き合うことが大切です。ファシリテーター自らがルールを守らなかったり、参加者に対してリスペクトを欠いた姿勢でファシリテートしてしまうと参加者との信頼関係が崩れてしまいます。
- 参加者をリスペクトするという姿勢は基本中の基本になります。こういった姿勢は参加者との信頼関係を構築するために必要です。ここでいうリスペクトとはその人の意見などを尊重すると言うことです。意見をした時に無視されたり、否定されたりすると発言した人は次積極的に意見しようとは思いません。
- ファシリテーターはMTGや会議におけるリーダーです。リーダーにとってチームメンバーとの信頼関係が重要なのと同様に、ファシリテーターにとって参加者のとの信頼関係は非常に重要です。加えて、参加者間での信頼関係の構築にも気を配ることも忘れてはいけません。
- 参加者に自律的に参加を促すために、場の心理的安全性を確保した状態で議論を進めることが大切です。積極的な発言は心理的に安全な場所でしか出て来ません。積極的な発言が出てくれば自ずと参加意識も高まります。
事前準備
次は事前準備についでです。例示した課題は以下のようなものでした。
- グランドルールの不足
- ゴール設定が曖昧
- アジェンダ設定が不十分
- 参加者の選定が不十分
- 議事録担当をアサインしていない
ファシリテーターにとってMTGや会議の事前準備は非常に重要です。グランドルールを定め、ゴールを定義し、アジェンダを設定し、参加者を選定し、必要な役割を割り振ります。見る限りかなり手間がかかりそうで面倒だと感じると思いまが、これらが曖昧な状態だったり、不十分な状態だと例にあげたような成果が出ないMTGや会議が行われる可能性が高くなってしまいます。
こういった準備はMTGの種別や会議の特性で大きく差が出るものではないので、テンプレートを用意してしまうのも1つの解決方法だと思います。サンプルとしてテンプレードを置いておきます。
- ルールの効果について
- ルールを設けると、ルールのせいにできます。話しの長い人を途中で切ったり、なかなか意見が出ない状況で無理に意見を出してもらうことは大変ですが、「ルールなので」と言えると、それがしやすくなるものです。そのため会議のルール設定の際には、自社の会議で解決させたい問題や、理想の状態を意識してルール設定を考えると良いでしょう。
進行
進行中に最も注意しなければならないことは 中立的な立場を維持すること です。ここで言う中立とは以下のような状態を指します。
- 対人において中立
- 立場が強い、明確な意見を持っているといった人が話し続けている状態を回避する
- ファシリテーター自身が、特定の人の意見を重要視しない
- 意見において中立
- 自分の主観を主張しすぎると話の範囲を狭めたり、偏った方向に向いたり、場合によっては話を誘導してしまいます
- 主観を述べたい場合は、「個人的な感想ですが」といった前置きをするなどの工夫をすると良いと思います
これが崩れると議論が特定の人の意見に左右されたり、ファシリテーター自体が議論を誘導してしまい、参加者の賛同や合意を得ることが難しくなってしまいます。
タイムキープやアクションの設定はアジェンダとして事前に設定することにより解決ができます。設定したルールを参加者に守ってもらうために、最初のアイスブレイク後に説明し、協力を依頼すると良いのではないかと思います。
応用編
ベテランのファシリテーターはMTGや会議の目的に沿って「話を聞き出す→話をまとめる」を繰り返すことにより共通認識を形成し、重点事項を導き、参加者全員の共通認識として合意するという流れを取ります。応用編ではベテランのファシリテーターがその際に使うことが多いスキルをいくつか紹介します。
MTGや会議の種類を見極め、適した進行を行う
MTGや会議にはいくつかの種類があり、ベテランファシリテーターは自分がファシリテートするMTGや会議がどれに該当するのかを意識した上で進行しています。みなさんが仕事で参加するケースが多いものを5つ挙げ、進行上で何を意識すればいいかを考えてみます。
- 意思決定
- 必要な話題に基づき議論を交わし、参加者と十分に情報共有した上で必要な決定をします。意思決定者にどのような視点で議論して欲しいのかを確認したり、議論が煮詰まった際に重要な視点を確認するといったアクションを取ると良いでしょう。
- 問題解決
- 具体的な問題や課題を取り上げて、事実関係や問題の原因を洗い出し、未来に向けての解決策を出します。ここで重要なことは、ある程度議論に区切りが付くごとに議論をまとめた発言と残る論点を明らかにすることです。
- アイデア出し(ブレスト)
- 実現が可能かどうかに気をとられず、あらゆる可能性について自由な発想を促し、アイデアを制限なく出し合います。前半は様子見しつつ、中盤から後半にかけて議論が盛り上がるケースが多いので、タイムキープを意識しつつ最後の10分くらいは整理とまとめを行うといいでしょう。
- 評価(フィードバック)
- 終了したプロジェクトなどについて事前に決めた評価基準をもとに振り返り、次回の機会に活かすために評価します。こういった場は批判的・否定的意見が出やすいため、心理的安全性を保つことを重視しながら進めることをお勧めします。
- 情報共有
- 業務進捗度合いなど、関係者が知っておくべき必要事項について共有します。定期的に行われる情報共有はマンネリ化しやすいので、後述するアイスブレイクや変化をつけるなどの工夫を行い、参加者の参加意識を維持することも考えながら進めると良いと思います。
議論をリードするための5つのトークスキル
議論をリードするためによく使われる5つのトークスキルについて共有します。
- 掘り下げ
- 「どうしてそうなったのですか」
- 「なぜ、そう思うのですか」
- 「~について、もっと話してください」
- 「それは、〇〇さんが~について発言したことに関係ありますか」
- 「~とはどういう意味でしょうか。説明してください」
- 「もう少し具体的に言うと」
- 「それについて、もっと詳しく説明してください」
- 「何か例を挙げてくれませんか」
- 短い相槌から話を展開させ、直接的な要望や質問へと流れをつくります。
- 引き出し
- 「ほう」とか「なるほど」といった短い相槌などの言語的なテクニックを用いる
- うなずく、視線を合わせる、沈黙する非言語テクニックなども駆使する
- 引き出しスキルを使うことにより、発言者の話を引き出しながら更に一歩踏み込んだ議論に導きます。
- 言い換え
- メンバーの発言趣旨が不明確な場合「〇〇さんの言っていることは~ということですね」
- メンバーが一度に複数のアイデア出し・主張をした場合
- 「アイデアがいくつか出ましたが、第一に〇〇さんが言ったことは~だと思いますが、合ってますか」
- アイデアを正しく理解できている事を確認したら「次に、〇〇さんは~という話をしましたが、このアイデアも検討の対象にしてもよろしいですか」
- ファシリテーターの言い換えによって1クッション置くことで、発言者の意図を参加者全員に同期させます。
- 引き入れ
- 直接的に穏やかなアプローチ。相手の名前を呼びかけ発言を求める
- 「〇〇さん、コレについてどんな意見がありますか」
- メンバー全員に同じ質問をして発言を引き出す
- 1人ずつ順番に発表してもらう
- 発言の少ないメンバーをディスカッションに引き入れるテクニックです。加えて参加者の発言量をある程度コントロールし、参加者全員に参加意識を持たせるために用いたりもします。
- 熱意
- ファシリテーター自身の熱意を伝え、それぞれのファシリテーターの熱意で士気を高め、作業をスムーズにする。
- 冷静で物静かなタイプ
- 「かなり進みましたね。徐々に実現可能な解決策に近づいてきました。」
- 普段からエネルギッシュで表現力が豊かなタイプ
- 「みなさんの仕事ぶりはすばらしいですね。とても感激しました!」
- 熱意に関してはファシリテーター個々の性格とかキャラクターもあるので、自分に合ったトークを考えてみてください。
アイスブレイクで場を和ませ、活発な議論ができる場を整えよう
アイスブレイクは緊張を和らげ、コミュニケーションを円滑に行うために行われます。具体的にどういった話をするかについてはファシリテーターの個性や参加者との関係性によって変わってくるので一概にどうとは言いづらいですが、個人的には自分の話をネタに「みなさんはどうですか?」といった形で話をするケースが多いです。
- プライベートの話
- 自分にあった出来事を話し、みなさんはどうですか?と尋ねてみる
- 「この前、ゴミ出しを忘れてしまって大変でした。みなさんはゴミ出し忘れないために工夫してることありますか?」
- 自分にあった出来事を話し、みなさんはどうですか?と尋ねてみる
- 当たり障りのない話
- 天気の話などがこれにあたります
- 「最近寒くなって来ましたが、もう暖房使ってます?今年は電気代が高くて...」
- 天気の話などがこれにあたります
- 時事ネタ
- ニュースなどをネタに話をする。なるべく対立が起こりにくいネタを選ぶ。
- 「ワールドカップ盛り上がってますが、みなさんは見てます?」
- ニュースなどをネタに話をする。なるべく対立が起こりにくいネタを選ぶ。
変化をつけて活性化しよう
定期的に行われているMTGや会議はマンネリ化が起こりやすいため、重要なのにおざなりになる可能性が高いと思います。短いMTGならば立ったままやるとか、意見を出すMTGならば付箋を使うとか、オンラインならばホワイトボードツールを使い視覚的に賑やかにするといった細かい工夫を入れてマンネリ化を防ぎましょう。
最後に
いかがだったでしょうか。普段何気なく目にしているファシリテーションですが、突き詰めて考えてみると奥が深く個性が色濃くでるものです。ファシリテーションスキルは参加者、自分のポジション、関わっているプロジェクト、所属している会社・組織などが変わっても、同じように使うことができるかなり便利なポータブルスキルと言えます。
かなり長文エントリーとなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。皆様のファシリテーションスキル習得や向上に役立てていただければ幸いです。
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