皆様はNFTゲームってご存知ですか?NFTゲームはブロックチェーン技術を利用したゲームのことで、以前はブロックチェーンゲームと呼ばれていました。 ゲームをプレイすることによってトークンを入手し、そのトークンを売却することでお金を稼ぐことができる(Play To Earn)点が大きな特徴です。GameFiといった表現をされることもあります。
スクウェア・エニックスやCygamesなどゲーム系大手も参入を表明していますし、東京ゲームショウ2022にも数多くのNFTゲームブースが出店され、賑わいを見せていました。
数あるNFTゲームの中で最も多くのユーザーがプレイしているゲームがAxie Infinityで、2022年9月のMAUはおよそ70万人と言われています。(暗号資産価格が最も高かった2022年1月のMAU270万人)
今回はゲーマーのJAMさんに2022年3月から6ヶ月間Axie Infinityをプレイしてもらい、NFTゲームの仕組みやプレイ感を調査しました。その中で感じた良い点・悪い点、NFTゲームの未来について見えてきたものをレポートしようと思います。
JAMさんとは?
- twitter|JAM
- 11歳の時に父親に買ってもらったPlayStation3ソフトDestinyをきっかけにFPSにハマり、今現在に至る。総プレイタイムは8年間でおよそ1万時間以上。
- 主なプレイ履歴
- 受賞歴
- 玄人志向杯 #8 ベスト16
Axie Infinityどうでした?
ーー 6ヶ月という長期間の調査ありがとうございました。今まではFPSがメインだったと思うのですが、ジャンルの異なるAxie Infinityはいかがでしたか?
JAM:想像以上に面白かったです。流石にもうお腹いっぱいですが(笑)
Axie Infinityの良い点、悪い点は?
ーー JAMさんがAxie Infinityプレイして感じた良い点、悪い点を教えてください。
JAM:そうですね、良い点としては2つあって、1つはゲーム性とゲームバランスがいい感じに調整されている点が挙げられます。2つ目は、私はプレイヤー間の心理戦的な側面を重視しているのですが、その点もPvP(アリーナ)バトルで味わうことができました。
悪い点としては3点あります。1点目は運要素が終盤で強く作用する点ですね。勝ち切ったと思った瞬間にクリティカルでひっくり返されたことが何度かあり、そこまでの積み上げがゼロになるのはどうなんだろう?と感じました。
2点目としてはシーズン20からSLP(Smooth Love Potion。Axie Infinityをプレイして獲得できる暗号資産の1種)の獲得ルールが大幅に変更されたため、ストーリーモードの存在感がないと言う点も改善の余地ありだと思います。
3点目はコミュニケーション要素が皆無な点です。これはプレイヤーにより賛否が分かれると思います。
ゲームとして楽しむ分には良いのですが、お金を稼ぐという視点で考えるとAxie Infinityは修行に近いなと思います(笑)
かかった費用と収益は?
ーー なるほど。ゲームとしては悪くはないが、熱中して続けるほどではないという感じだったんですね。
JAM:簡単に言っちゃうとそんな感じです。
ーー ぶっちゃけた話、稼げたんですか?
JAM:全然ですね。2022年9月時点の話なので、今後も同じとは限りませんが。9月末時点のレートで言うとかかった費用がおよそ7万円、得た収益と残金を合わせるとおよそ1万円円。合計で約6万円の赤字です。
ーー なるほど。なかなか厳しいですね。もらったデータを元に2022年9月末の終値ベースで計算したものを表にしておきます。
項目 | 数量 | 日本円換算額 | 2022年9月末の終値 |
---|---|---|---|
購入して送金したETHの数量 | 0.379 ETH | -72,846 円 | *1 |
購入したアクシー | 5体 | 1,922 円 | *2 |
現状の手元資産 | eth:0.0348 SLP:1,128 AXS:0 |
7,221 円 | *3 |
- *1:2022年9月末の終値 = 192,207円で計算。
- *2:2022年9月末の最安値 = 0.002 ETHで計算。
- ETH:Ethereum。インターネット上で送金や決済に利用されている暗号資産の1種。
- *3:SLP / USDT = 0.00326ドル、USD / JPY = 144.74円で計算。
- USDT:Tether。米ドル通貨に類似する価値を持つことを目的とした暗号資産。
- AXS:Axie Infinityをプレイして獲得できる暗号資産の1種。
ゲーマー視点から見たNFTゲームの未来
ーー ゲーマー視点から見たNFTゲームの未来について聞いていきたいと思います。まず、JAMさんがゲームに求めるものって何ですか?
JAM:個人的な意見ですが、オンラインゲームを楽しむために必要な要素はプレイヤー同士のコミュニケーション、本気のプレイヤー同志の勝負、運営力という3つだと思っています。
Axie Infinityはこの要素のうち、本気のプレイヤー同志の勝負、運営力は満たしていると感じています。ですがプレイヤー同士のコミュニケーションは全くないので、自分が飽きたら終わりです。最近プレイヤー数が減っているのもトークン価格が下落し、一人では続けるモチベーションが保てなくなったことが理由なのではないかなと思います。スカラーシップ(アクシーを所有している人が所有していない人にアクシーを貸し出し、獲得した暗号資産を分け合える制度)があるからこそ仕事としてプレイし続ける人も一定いるとは思いますが、稼ぐためにやるとしたら相当な精神力を求められると思います。
トークン価格の下落について少し触れましたが、市況や相場といったことは専門外なので、そのあたりは詳しい人にお任せしたいところですね。
ーー なるほど。環境が悪くなってもゲームが面白くて、一緒に遊べる仲間がいればゲームを続けるモチベーションになると言うことなんですね。Axie Infinityにおいて強くなるための手段の1つとしてマーケットプレイス(ゲーム内のアイテムやアクシーを取引するサービス)で強いAxieを買うということが考えられますが、そのあたりはどう考えていますか?
JAM:正直な話、個人的にはpay to win(課金するほど強くなれるモデル)はあまり好きではありません。フリーミアムモデルのオンラインゲームは基本的に強さを買うのではなく、スキンなどの付加的な要素を買うモデルの方が私は好きですし、多くのゲーマーも似たような意見なんじゃないかと思っています。
ーー NFTゲームの今後について、多くの人が熱狂するようなビックタイトルが生まれるためには何が必要だと思いますか?
JAM:Axie Infinityをプレイした結果を踏まえて考えると、PvP(プレイヤー対プレイヤー)やGvG(ギルド対ギルド)を通じたガバナンストークン(DAO(分散型自立組織)の運営における意思決定において、保有者に投票の権利を与えるトークン)の獲得という構造に可能性を感じました。
稼ぐことが目的のプレイヤーは収益性の高いトークンが欲しい、ゲームを楽しみたいプレイヤーは自分の意見をゲームに反映させることができるトークンが欲しいといった感じで、お互い目的は違うけど欲しいものは同じということになります。そういった構造になった場合、多くのプレイヤーがPvPやGvGをプレイすることになりますし、本気度が高まるのではないか思いました。
「俺より強い奴に会いに行く」じゃないですが、自分と同等以上の本気度でゲームに向き合っているプレイヤーとの真剣勝負は最高に面白いですし、自分の成長にも繋がると思っています。自分が成長できているとか、チームが強くなってると感じる時ってたまらなく楽しいじゃないですか(笑)
ーー 確かに。他に必要だと感じる要素ってありますか?
JAM:経済政策力と運営力だと思います。経済政策力については専門外なのですが、トークンの価格はその他の相場と連動しているので、トークンの流通量などをしっかりデザインしたり、コントロールして価格を安定させることだと思います。合理的に考えて稼ぐことが目的のユーザーはトークンの価格が下がり続けるとゲームから離脱するんじゃないかな。これは個人的な疑問なのですが、価格のコントロールって国(政府とか日銀)がやってじゃないですか、ゲーム業界に日銀がやってることと同じようなことができる人っているんですかね?
ーー 噂レベルですが、海外ではそういった人が少しずつ出てきてるとは聞いてますが、日本では聞いたことないですね。運営力に関してはどうでしょうか?
JAM:運営力は運営とプレイヤー間の信頼関係を構築して維持し続ける力とか、ゲーム性を壊さないアップデートをデザインできる力です。オンラインゲームなので意図せずゲーム性が壊れるアップデートをしてしまうこともあります。そういったケースをなるべく減らすこために、日頃からプレイヤーとのコミュニケーションを大切にする姿勢が必要だと思います。
もちろんプレイヤーの意見を全部聞いて欲しいと言うわけではありません。運営側もゲームを成長させようと日々必死に取り組んでいると思います。ですがプレイヤーが考えているゲームの長所と運営が認知している長所が同じとは限りません。運営がバグだと認識しているものが、プレイヤーにとっては面白い要素というケースもあったりします。
ーー JAMさんが運営力に対して考えるきっかけになったエピソードってありますか?
JAM:そうですね、以前壁抜き(遮蔽物を弾が貫通すること)が可能なFPS(First Person Shooterの略。一人称視点のシューティングゲーム)をプレイしてた時期があったのですが、プレイヤー側からする壁抜きはプレイヤースキルを発揮できる重要な要素で、それが面白くてプレイしていました。ですが、アップデートで相手の位置を特定できるキャラが出現したことでゲーム性が大きく変わってしまい、私含めプレイヤーの約30%が離れてしまったということがありました。その後運営側はプレイヤーの意見に耳を傾け、移動中以外は位置を特定できないという対応をしましたが、回復できたのは10%程度だったと記憶しています。
プレイヤーの意見を日頃から注意深く聞いていればこのようなケースは回避できると思います。後はFF14のPLL(プロデューサーレターLIVE)のように大きなアップデートの際はユーザーにしっかりとした説明をすることが大事ですね。プレイヤーからすると「俺たち大事にされてるなー」と感じるので。
最後に
ーー なるほど。まだまだ課題は多そうですが、国内にも国外にも素晴らしいゲームを作る会社はたくさんあるので、将来に期待といった感じですね。ちなみに良さそうなタイトルが出たら、今プレイしてるタイトルからの乗り換えはありますかね?
JAM:検討します(笑)どちらにせよ素晴らしいタイトルが出てきてくれれば嬉しいなと思います。
ーー JAMさん、ありがとうございました!
宣伝
株式会社WAPでは「日本企業が世界と戦うための伴走型リーダー育成」をミッションに掲げています。この困難なミッションに共に立ち向かってくれるプロジェクトマネージャーを募集しています。ちょっと気になったので話を聞いてみたい!という方も大歓迎です。Meetyにてお気軽にお申し込みください。